東京では、街の歴史を考えるとき100年前と100年後ではまったく違う風景が展開される。だから空間を通して街の歴史を感じられるように、100年前が100年後を作っていくような街を考えたい。
敷地は荒川と隅田川に挟まれた千住大川町にある木造密集地域一体で、そのままにしておくと街にとってリスクを伴う木造住宅を型枠にして、その場所の土地、空間、時間をかたどったコンクリートの建築を作る。
木密地域特有の狭小な隙間が構造になることで街が反転した空間になり、防火壁が作られるだけではなく、密集した住宅街だった空間は隣接する商店街に放たれた連続する洞窟のような空間になり、バラバラだった住まいは人々がともに住まうことのできる大きな集合住宅になり、広く強固なコンクリートの建築の屋上は街の新たな土地になり、まるで街の人々が知り得ない街の前世がつくる、新たな街の姿である。