審査講評
テーマ:「つながる建築」
審査員/米田 明 氏
全体の講評
今回のテーマは、「つながる」という一般的で判りやすい言葉によって建築を形容したものとなっている。それゆえに多岐にわたる事物についての、多様な提案がなされるだろうと予想はしていた。そもそもなぜこのようなテーマにしたのかというと、ひとえに「つながる」とは人間の認識の基本的な様態であり、また人間が生きていく上で欠かせない態度だからである。古来より記憶や発想、さらにはコミュニケーション上のレトリックの技法として、結合術というものが考えられてきた。 人間が新しいつながりを見出すことによって、現実世界の既存の関係を再編成し、人間の生き方の新しい関係性が生み出されていく。建築は、そのような人間の持つ関係性を具体的な場所として媒介し、構築するものだということができる。こうして人間から離れた存在であった自然や他者が、身近な人間が生きる場としての環境や社会となってきた。特に近代以降、人間が神や王の支配から逃れて自律的な主体となると、建築は単に権威を象徴する物質的な実体ではなく、人間関係のネットワークを再領域化するメカニズムへと移行してきた。 この様な観点から、今回提出された案の様々な構想を追体験していくことは、楽しかった。最終的に選ばれているものは、「つながる」ことによって浮かび上がる新しい関係性が、硬直したものでなく、非現実的なものでもなく、柔軟でかつ自然であり、さらに矛盾する様だがユニークなものであった。色々な視点があることが、建築の意味を豊かにすると考えたため、あえて作品の優劣を強調しなかった。そして人間の新たな認識と生の場として、今後も建築は一つのきっかけであって欲しいとも思った。
優秀賞
花尻純 繡/残石の景
石切り場という場所性、それは採石によって刻々と大地が削られ変容していく現場である。そこに残された、ある意味捨てられた石を用いて、大地の欠損を埋め合わせるようなシェルターが、繊細な架構によりもたらされている。圧縮されるのではなくテンションに釣り合う重しとして、新たな修景を生み出している。
優秀賞
中崎佑香
共生への建築−神田のモリを建てる
歴史的に上書きされてきた街の地層的に埋もれた痕跡、それらを再度実空間として歴史横断的に再生し、結合させること。記録や記憶であった場が、未来に向けた新しい経験のステージに転換するところに面白さを感じた。
優秀賞
照井遥仁
疎に向かうまち、拡がる庭と大きな環境のイエ
地域のオーガナイザーとして、生活者でもある建築家が中心に設定されている。もはや現実が、こうした提案に追いついている事例もあると思われるが、それだけにリアリティを感じさせる。減築により共有スペースを結びつけていく手法は、一つの定型となるように思われる。
優秀賞
来間海人
二重螺旋の家族ごっこ
二重螺旋の構造体の中に自然と開放された共有空間を入れ込むことにより、従来の血縁家族像から拡張された、家族的つながりの場を構想。新たな生態系とも言える諸生物との共存が、プリミティブな生活感を喚起させた。
奨励賞
日高一輝
これからの文化的で最低限度の生活−1.7kmの水道道路沿い線形都営住宅列の再編−
現状、手持ち無沙汰な地上階のヴォイドスペースを持つ、いわゆる団地が延々と連なっている。今となっては人影も少なく寂しげな風情だが、そのヴォイドを水平、垂直につなぐことによって、人々が歩いて巡る楽しげな界隈性を提示している。
奨励賞
鹿田萌々香
SHIMBASHI GROWTH TOWER
一見、トリッキーなショーケースの印象を持ったが、従来の人々が商品の間を巡る大型店舗に対して、ショーケースが色々な空間を横断していく様は、都市に対する新たなショーウインドーとなって、都市と商空間との開放的な結びつきをもたらすように思われた。
Profile
•1959年 兵庫県生まれ.
•1982年 東京大学工学部建築学科卒業
•1984年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
•1984~1989年 竹中工務店設計部
•1991年 ハーバード大学デザイン大学院(Harvard University Graduate School of Design)修士課程(MArch II)修了
•1991年 建築設計事務所アーキテクトン設立
•2004年~2013年 京都工芸繊維大学准教授
•2014年~2020年 京都工芸繊維大学教授
•2021年~ 関西学院大学建築学部教授、京都工芸繊維大学名誉教授
主な受賞歴など
•1995年 JCDデザイン賞 / 日本商環境設計家協会(アルス堺東アップル店)
•1997年 JCDデザイン賞 / 日本商環境設計家協会(極東開発三木工場事務所棟)
•2004年 第20回吉岡賞(現新建築賞) / 新建築社 (BLOC)
•2004年 AR Design Vanguard 2004 / Architectural Record
•2005年 グッドデザイン賞 (HP)
•2005年 第8回TEPCO快適住宅コンテスト / 東京電力 : 入選(HP)
•2006年 日本建築学会 作品選集 2006(HP)
•2006年 グッドデザイン賞 (Δ)
•2006年 日本建築家協会 優秀建築選 2006 (Δ)
•2008年 グッドデザイン賞 (K Clinic)
•2008年 World Architecture Festival / Barcelona : “Health” section shortlist 入選 (K Clinic)
•2008年 DFA (Design for Asia Awards) 2008/ Hong Kong Design Centre : Bronze Award (K Clinic)
•2008年 日本建築家協会 優秀建築選 2008 (K Clinic)
•2009年 International Architecture Awards / The Chicago Athenaeum (Δ)
•2010年 WAN(World Architecture News) AWARDS 09 : House of the Year (HOJO)
•2010年 D&AD AWARDS 2010, Environmental Design “Leisure & Tourism”, In-Book : Bronze Award (HOJO)
•2010年 IDA (International Design Awards) 09, New Residential Building : First Prize (HOJO)
•2010年 IDA (International Design Awards) 09, New Commercial Building : First Prize (K Clinic)
•2011年 京都府新総合資料館(仮称)公募型設計競技:入選
•2018年 IDA (International design awards) 17, New Residential Building : Bronze Award (Landing House II)
•2018年 ABB Leaf Awards 2018, Residential Building – Single Occupancy : shortlist 入選 (Landing House II)
•2018年 AMP (Architecture Master Prize)18, Residential Architecture : honorable mention (Landing House II)
(令和7年度)第32回ユニオン造形デザイン賞
テーマ:「つながる建築」
審査員:米田 明 氏 審査講評
| 賞 | 受賞者氏名/所属機関 | 作品名 | 共同制作者 | 賞金 (単位:千円) |
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| 優秀賞 | 花尻 純 早稲田大学大学院創造理工学研究科 建築学専攻 |
繡/残石の景 | 作品 | 共同研究者/ 大森 康正 |
500 |
| 優秀賞 | 中崎 佑香 フリーランス |
共生への建築 -神田のモリを建てる- | 作品 | 500 | |
| 優秀賞 | 照井 遥仁 横浜国立大学大学院都市イノベーション学府 建築都市文化専攻建築都市デザインコース |
疎に向かうまち、拡がる庭と大きな環境のイエ | 作品 | 500 | |
| 優秀賞 | 来間 海人 大和大学 建築学専攻 |
二重螺旋の家族ごっこ | 作品 | 共同研究者/ 横内 稀人 |
500 |
| 奨励賞 | 日高 一輝 芝浦工業大学 建築学部建築学科SAコース |
これからの文化的で最低限度の生活―1.7kmの水道道路沿い線形都営住宅列の再編― | 作品 | 250 | |
| 奨励賞 | 鹿田 萌々香 島根大学大学院 自然科学研究科 環境システム科学専攻 建築デザイン学コース |
SHIMBASHI GROWTH TOWER | 作品 | 共同研究者/ 桂藤 快晟 |
250 |
| 合計6件 | 総額 2,500 | ||||