大賞
shadow tracing on desert
岩下 昂平
東京工業大学 大学院 建築学系
乾燥帯に位置する砂漠で物語は始まった。
最初はひとりの家だった。住人は家が跡形もなく失われることを恐れた。この家がここに在る証は、地面に映る自身の影しかなかった。住人は、そこに居た記憶を残すために、影のかたちを象り始める。
水辺に行き、泥や藁を混ぜて日干し煉瓦を作り、決まった時間に影をなぞるように積んでゆく。できた壁はまた影をつくり、この手作業は続いてゆく。
太陽や月、大きなリズムに合わせて、あるときは午後に、今度は朝に、寒い夜も月の光を頼りに煉瓦を積んだ。
やがて建てられてゆく煉瓦の壁は、木々や動物たち、オアシスや遊牧民の集団を横断してその領域を拡大していった。
おそらく初めの住人はもう亡くなっているであろう。その家も崩れかけている。
砂漠に遺るのは、巨大な影絵だ。建築の形象、そしてその営みの記憶である。
(令和5年度)第30回ユニオン造形デザイン賞
テーマ:「記憶の建築」
審査員:田根 剛氏 審査講評
賞 | 受賞者氏名/所属機関 | 作品名 | 共同制作者 | 賞金 (単位:千円) |
|
大賞 | 岩下 昂平 東京工業大学大学院 建築学系 |
shadow tracing on desert | 作品 | 1,000 | |
優秀賞 | 鴛海 羽乃 北九州市立大学大学院 国際環境工学研究科 環境工学専攻 |
記憶のからくり箱 | 作品 | 共同研究者/ 道田 志歩(北九州市立大学大学院 国際環境工学研究科 環境工学専攻) |
500 |
優秀賞 | 北島 千朔 九州大学大学院 人間環境学府 空間システム専攻 |
文様替え | 作品 | 500 | |
奨励賞 | 矢野 泉和 九州大学大学院 人間環境学府 空間システム専攻 |
BIOTECUTURE | 作品 | 200 | |
奨励賞 | 東野 真人 東京大学大学院 工学系研究科 生産技術研究所 |
elusive qualities | 作品 | 200 | |
奨励賞 | 小泉 裕聖 フリーランス |
カヤ スケープ | 作品 | 200 | |
合計6件 | 総額 2,600 |