研究報告要約
調査研究
6-113
佐々木 優二
目的
1953年に北海道防寒住宅建設等促進法(以下、寒住法とする)が制定されたことを契機に、北海道の住宅は独自の発展を遂げてきた。具体的には、この法律の施行によって、コンクリートブロックを主要構造とした補強コンクリートブロック造住宅(以下、CB住宅とする)が北海道で開発された。CB住宅は耐火性に優れていたこともあり、1950年代後半から1970年代まで大量に供給された。このような中、北海道では、CB住宅に外断熱を施して、さらに外装仕上げ材としてコンクリートブロックを積む「2重積みCB住宅」が開発され、これまで数多く供給された。しかし、1969年の寒住法一部改正による木造住宅に対する公庫融資の解除に伴い、2重積みCB住宅を含めたCB住宅の着工数は大きく減少した。さらに近年では、CB住宅・2重積みCB住宅は、建設費が木造よりも高いこと、施工できる大工の不足、設計者が高齢化していることなどの理由から、着工戸数は急減している。
2重積みCB住宅は、北海道におけるCB住宅の開発・普及の歴史を経て開発された住宅・構法であり、北海道独自の住宅文化の1つと考えられる。また、エネルギー消費量が同時期に建設された木造住宅よりも少ないことといった有意性が指摘されており1), 2)、現代住宅にも適用できる考え方や技術を有している可能性がある。そのため、2重積みCB住宅の設計者がいなくなったり、既存ストックが解体されたりする前に、2重積みCB住宅の持つポテンシャルを再考することが必要と考えられる。しかし、そのポテンシャルを顕在化し、現代住宅に応用可能な考え方や技術の抽出は行なわれていない。
本研究では、①設計・②環境・③住みこなしの主に3つの視点から2重積みCB住宅のポテンシャルを顕在化し、現代住宅に応用できる考え方や技術を抽出したうえで、それらを現代住宅に実装するための方法を見出すことを目的とする。
2重積みCB住宅を設計・施工できる技術者が減少している現在において、今後さらなる供給促進を考えることは困難と考えられる。しかし北海道の住宅文化を形成した2重積みCB住宅の持つ考え方や技術を抽出し、それらを現代住宅に実装することができれば、2重積みCB住宅の持つポテンシャルが今後も継承されることになると考えられる。このことは、北海道が形成してきた独自の住宅文化の継承でもあり、大きな意義があると考えられる。
内容
本研究では、①設計・②環境・③住みこなしの主に3つの視点から2重積みCB住宅のポテンシャルを顕在化し、現代住宅への実装方法を見出すことを目的とする。具体的には、設計者への聞き取り調査、温熱環境実測、居住者アンケートを行ない、ポテンシャルを顕在化する。これらを踏まえて、現代にも応用できる考え方や技術を抽出し、それらを現代住宅に実装するための方法を検討する。2重積みCB住宅の持つポテンシャルを現代住宅に実装することができれば、2重積みCB住宅の持つ価値が今後も継承されることになる。このことは、北海道が形成してきた独自の住宅文化の継承でもあり、大きな意義がある。
方法
本研究は、次に示す方法で実施した。
(1)設計・施工の実態把握
2重積みCB住宅の設計者への聞き取り調査と現場調査を通じて、設計方法に関する実態を整理する。
(2)温熱環境の実態把握
2重積みCB住宅の温熱環境実測と住まい手へのアンケートを行ない、温熱環境の実態を把握する。
(3)住みこなし(居住者の生活行動)の実態把握
2重積みCB住宅の住まい手への聞き取り調査を行ない、木造住宅とは異なり大きな蓄熱性を有する2重積みCB住宅独自の生活行動を把握し、住みこなしの実態を明らかにする。
(4)ポテンシャルの顕在化と現代住宅への実装方法の検討
第2章から第4章までの調査結果を通じて、2重積みCB住宅が持つポテンシャルを顕在化し、現代住宅に応用できる考え方や技術を現代住宅に実装する方法を検討する。
結論・考察
(1)設計・施工の実態
2重積みCB住宅の設計者は、現在、共同研究者であるアーブ建築研究所の1社のみであり、施工者もほとんど存在しないことが確認された。
設計者は、意匠面においてコンクリートブロックを真物で用いることを前提に、寸法設計を行なっていた。
環境面では、コンクリートブロックは多孔質であるため、吹付け硬質ウレタンフォームを用いて気密性を確保する工夫がなされていた。
施工には大工は7人前後が必要となり、木造住宅より必要人工数が多くなることが明らかとなった。
(2)温熱環境の実態
2重積みCB住宅における冬期の暖房停止後の実測では室温の低下が1か月で14.1Kにとどまった。
UA値0.38W/m²K程度の木造住宅では、暖房停止12時間で室温が約8K低下するという報告があり、木造住宅よりも2重積みCB住宅の蓄熱性が高いと確認された。
また夏期・冬期を通じて室温とグローブ温度はほぼ一致し、室内の放射環境は安定していた。この点は2重積みCB住宅は蓄熱性が高いとする点と合致した。
(3)住みこなしの実態
多くの住まい手が夏期にはナイトパージを実施し、コンクリートブロックに冷気を蓄熱する生活行動を行なっていた。
冬期には、夜間や不在時に暖房を停止する間欠運転を行う住まい手が過半数を占めた。さらに数日先の天気予報を踏まえて床暖房の設定温度や流量を調整するなど、2重積みCB住宅にクラス居住者の特有の生活行動、住みこなしの実態を確認できた。
また居住者が「暖房を夜間に運転すると眠れない」といった失敗体験をきっかけに、生活行動を見直す実態も確認された。
(4)ポテンシャルの顕在化と現代住宅への実装方法の検討
2重積みCB住宅のポテンシャルとして確認された蓄熱性は、内装材として熱容量が大きい木毛セメント板を活用することにより、エネルギー削減効果は限定的ではあるが、現代住宅に実装できる可能性が示された。
英文要約
研究題目
Revealing the Potential of Concrete Block House with Cavity Walls in Hokkaido and Their
Application to Contemporary Housing
申請者(代表研究者)氏名・所属機関及び職名
Yuji SASAKI, Researcher, Hokkaido Research Organization, Building Research Department, Northern Resional Research Institute, Dr.Design
本文
This study aimed to identify the potential of Concrete Block Houses with Cavity Walls from three main perspectives—design, environmental performance, and adaptive lifestyle—and to explore how their principles and technologies can be applied to contemporary housing.
In terms of design, it was confirmed that only a limited number of architects currently work with this construction method, and that it requires a relatively large workforce for construction. Environmentally, measures such as using spray polyurethane foam were taken to ensure airtightness, compensating for the porous nature of concrete blocks. Thermal environment measurements showed that indoor temperatures declined slowly after heating was turned off in winter, demonstrating the house’s high thermal storage capacity. Interviews with residents revealed unique adaptive lifestyles, including night purge in summer, intermittent heating in winter, and adjustments to heating settings based on weather forecasts. Experiences of discomfort also served as triggers for residents to develop more suitable ways of living in the house.
Furthermore, a simulation using a simplified thermal network model showed that replacing gypsum board with wood wool cement board as an interior finish could slightly reduce heating loads, suggesting its potential as a viable material for modern applications.
In summary, this study demonstrated that the environmental features and knowledge embodied in Concrete Block Houses with Cavity Walls can be effectively implemented in modern housing. The findings contribute to preserving and continuing Hokkaido’s unique architectural culture.